書類にサインしている

進学をきっかけに賃貸物件で一人暮らしを始める際は、貸主と契約書を交わすことになります。しかし、契約書の内容や注意点がわからず、不安に感じている方も多いのではないでしょうか。契約書は入居後の生活を左右する大切な書類であり、重要な内容が記載されています。特に、賃料に関する契約条件は正確に理解しておくことが重要です。

そこで本記事では、賃貸借契約書の必要性から注意点までわかりやすく解説します。賃貸借契約にあたり不安を感じている方は、ぜひ参考にしてください。

賃貸借契約書とは

賃貸借契約書とは、貸主と借主が合意した契約条件をまとめた書類です。一般的な賃貸契約では、管理会社があらかじめ作成した書面が使用されます。契約期間や賃料、敷金、更新条件などが記載されており、各項目や表現は物件や貸主によって異なります。

ここでは、賃貸借契約書の必要性と重要事項説明書との違いを解説します。


※参考:国土交通省「賃貸住宅の入居・退去に係る留意点」

https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000026.html

必要性

賃貸借契約書は、貸主と借主の間で合意した契約条件を明確に残すために必要です。何かトラブルが発生した時に、あらかじめ定めた契約条件を示す証拠として用いられます。

また、契約書には物件の名称や所在地、構造、築年数、間取り、面積、設備などの情報が記載されているため、どのような物件を借りるのかを正確に把握するためにも重要です。

重要事項説明書との違い

賃貸借契約書と混同されやすい書類が、重要事項説明書です。賃貸借契約書は、貸主と正式に交わす契約書で、合意した契約条件をまとめるために作成されます。

一方で、重要事項説明書は、賃貸借契約前に行われる「重要事項説明」に使用される書面のことを指します。契約条件の最終確認をするために必要な書類です。

両者の役割は異なるため、賃貸借契約前に正しく理解しておきましょう。

賃貸借契約書の注意点

一人暮らし用のモデルルーム

賃貸借契約書には重要な内容が記載されているため、特に注意して確認すべきポイントを事前に把握しておきましょう。賃料や敷金だけでなく、保証人の責任範囲や退去時の原状回復、更新などに関する条件も重要です。

ここでは、初めて賃貸借契約を結ぶ学生に向けて、5つの注意点を解説します。

物件の詳細情報(間取りや設備など)

まず確認しておきたいのが、物件の詳細情報です。内見の際に間取りや設備などについて説明を受けていますが、「実際の情報と一致しているか」を賃貸借契約書で確認しましょう。

たとえば、内見時にはエアコンが設置されていても、賃貸借契約書や重要事項説明書に記載がなければ、前の入居者が残した設備である可能性があります。前の入居者が残した設備が故障した場合でも、一般的に貸主には修繕義務がありません。

また、インターネット設備や照明器具なども同様です。備え付けられていても修繕の対象外である設備がないか、契約前に確認しましょう。

禁止事項

物件内や敷地内で禁止されている事項についても、賃貸借契約書に記載されています。たとえば、ペットの飼育や楽器の演奏、石油ストーブの使用などの内容です。

特に、ペット禁止の物件で無断飼育をすると、近隣からの通報や退去時の傷や臭いなどから発覚し、追加費用を請求されたり強制退去を求められたりするリスクがあります。契約条件に違反すると退去を求められるおそれがあるため、十分に注意しましょう。

敷金返還の特約

敷金は入居時に貸主や賃貸管理会社へ預けるお金で、未払いの賃料や修繕費などに充てられます。退去時に残額がある場合は返還されますが、特に注意したいのが「敷金返還に関する特約」です。

賃貸借契約書に「通常使用による損耗も借主負担とする」といった条項がある場合は、通常は借主が負担する必要のない日常生活で生じた傷や汚れについても、敷金から差し引かれることがあります。「どのような場合に敷金が差し引かれるのか」を契約前に確認しておくことが大切です。

原状回復の義務と範囲

一般的な賃貸借契約では、退去する際に借主に原状回復の義務があります。

原状回復とは、退去時に「自分の故意や不注意によって付けてしまった傷や汚れ」を元に戻す借主の義務のことです。よく「入居時の状態(新品同様)に戻すこと」と誤解されがちですが、普通に暮らしていて自然に古くなった分(床の日焼けや家具の設置跡など)は、大家さんの負担で直すのが法律上の大原則です。ただし、ひとり暮らし用の物件などでは、契約書の「特約」によって退去時のハウスクリーニング代などを借主負担とするケースが一般的です。


たとえば、タバコのヤニ汚れ、壁への落書きや大きな穴、ペットによる臭いや傷などの修繕費用は、借主の負担となります。

ただし、通常の生活で生じる汚れや劣化の修繕費用は、一般的に貸主の負担となることが多いです。日焼けによる壁紙や床の変色、通常使用によるフローリングの擦り傷などは、経年劣化とみなされることが多いです。

原状回復の義務と範囲は、賃貸借契約の条件によって異なります。契約書にサインする前に、正確に理解しておくことが重要です。

契約期間と更新条件

賃貸借契約の期間は、2年程度で定められているケースが多く見られます。期間満了後も住み続けたい場合は、更新手続きが必要です。契約前に、更新の条件や金額を確認しておきましょう。

更新条件は物件によって異なります。たとえば、更新料として賃料1カ月分相当を支払うケースもあれば、更新事務手数料のみというケースもあります。「更新時に賃料が改定される可能性があるかどうか」も、併せて確認しておきましょう。

 

賃貸契約前の確認事項

賃貸契約前の確認事項としては、契約書に書かれている条件そのものだけでなく、費用の総額やスケジュールなど、書面の外側にある情報もあわせて押さえておくことが大切です。ここでは、契約書にサインをする前に確認しておきたい項目を整理します。

■初期費用の総額と内訳
敷金・礼金・前家賃・仲介手数料・火災保険料・鍵交換費用などを合算した総額を確認しましょう。見積書と契約書で金額や項目が一致しているか、契約日までに突き合わせておくと安心です。

■賃料が発生し始める日とフリーレントの有無
賃料は契約開始日から発生するのが基本です。実際に入居する日に合わせて賃料の発生日をずらしてもらえることはほとんどないため、契約開始日をいつに設定するかは事前に確認しておきましょう。なお物件によっては、契約開始日から一定期間の賃料が無料になる「フリーレント」が付いていることがあります。必ず付くものではなく、あれば得になる特典程度に考えておくとよいでしょう。

■内見時の状態と契約書の記載が一致しているか
設備・間取り・専有面積などについて、内見時に確認した内容と契約書・重要事項説明書の記載が一致しているかを確認します。差異があれば、契約前に必ず質問しておきましょう。

■退去時の費用と原状回復の負担区分
入居時の費用だけでなく、退去時にどのような費用が発生するのかも事前に確認したいポイントです。ハウスクリーニング代の負担区分や、原状回復の範囲について記載を確認しておきましょう。

■更新時の条件
契約期間満了後も住み続ける場合の更新料や更新事務手数料、賃料改定の可能性についても、契約前に確認しておくと安心です

■連絡先と手続きの窓口
入居後の設備の不具合やトラブル時に、どこへ連絡すればよいのかを確認しておきましょう。管理会社と貸主で窓口が分かれているケースもあります。

これらは、契約後に「聞いていなかった」となりやすい項目です。疑問点は契約書にサインをする前に、不動産会社や管理会社へ確認しておきましょう。

賃貸借契約書を紛失した際の対処法

賃貸借契約書が見つからない場合や捨ててしまった場合でも、焦る必要はありません。まずは貸主や賃貸管理会社に連絡しましょう。

契約書はオーナーや管理会社も保管しているため、コピーを発行してもらえることがあります。原本を再作成することも可能ですが、手続きが複雑になるうえ、手数料が発生する場合があります。そのため、コピーを受け取るほうが現実的です。

なお、契約書には貸主や賃貸管理会社の連絡先が記載されています。紛失すると連絡先がわからなくなるため、契約後に連絡先をメモや携帯に登録しておきましょう。

賃貸借契約書・重要事項説明書以外の主な書類

賃貸借契約では、契約書や重要事項説明書のほかにも複数の書類が扱われます。書類の内容は物件や契約条件によって異なるため、事前に確認しておきましょう。

一般的な賃貸借契約で扱われる主な書類は、次の通りです。

・火災保険の加入申込書

・連帯保証人に関する書類

・保証会社に提出する書類

・使用細則

・ペット契約条項


多くの賃貸物件では火災保険への加入が義務付けられており、契約時に申し込みが行われます。使用細則には、エントランスや駐輪場といった共用部分の使い方に関する決まりがまとめられています。

これらの書類の提出や確認も契約手続きの一部として扱われるため、目を通さずにサインするのではなく、内容を理解しておくことが大切です。

重要事項説明書って事前にもらえる?

重要事項説明書って事前にもらえるのか気になる方も多いと思いますが、依頼をすれば説明日より前に写しを受け取れるケースがあります。ここでは、事前に受け取れるかどうかの考え方と、依頼するときのポイントを解説します。

重要事項説明は、宅地建物取引業法にもとづき、契約が成立する前に宅地建物取引士が書面を交付して行うことが定められています。一方で、「説明日より前に書面を渡さなければならない」という決まりがあるわけではないため、事前に受け取れるかどうかは不動産会社の運用によって異なるのが実情です。

ただし実務上は、内容を落ち着いて確認してもらうために、事前送付に対応している会社も少なくありません。特に次のようなケースでは、事前送付を相談してみるとよいでしょう。

・保護者が遠方に住んでおり、契約前に内容を共有しておきたい場合
・当日に説明を受けるだけでは、内容を判断しきれないと感じる場合
・オンラインで重要事項説明(IT重説)を受ける場合

なお、オンラインで重要事項説明を受ける場合は、あらかじめ書面(電磁的方法による交付を含む)を受け取ったうえで実施するのが一般的です。オンライン対応が可能かどうかも含め、早めに不動産会社へ確認しておきましょう。

事前に受け取れた場合は、賃料や契約期間などの基本的な条件に加えて、退去時の原状回復の範囲、禁止事項、更新の条件といった、あとから確認しづらい項目を中心に目を通しておくことをおすすめします。わからない箇所は当日の説明で質問できるよう、事前にメモにまとめておくとスムーズです。

なお、賃貸借契約書についても、内容を事前に確認したい場合は写しの送付を相談できます。重要事項説明書と同じく事前交付が義務づけられているわけではありませんが、記載内容を落ち着いて確認したい場合や、保護者と共有したい場合は、早めに不動産会社へ依頼してみましょう。

賃貸借契約書の内容を正確に理解したうえでサインしよう

賃貸借契約書の必要性や注意点を紹介しました。賃貸借契約書の内容は入居後の生活に大きく影響しますが、敷金や原状回復、更新条件などの注意点に気をつけることで、退去時や更新時の思わぬトラブルを防ぎやすくなります。

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